ブドウ畑の空に乾杯

私のパトロン

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町全体に、ワインの発酵の香りが漂っている.

比重がある程度まで下がってきたワインをタンクから樽へ移し変えた.
換気扇はあるけれど今が一番発酵の盛んな時期で、カーヴは二酸化炭素で目も霞むほどの息苦しさ.
あまり素早く動くことができない.

すべての樽を終わらせてしまいたかったのだけど、まだ地下の樽庫での動線も道具も
完全には把握していないのでとてもじゃないが、一日では終わらなかった.

納得いかない...

何と競い合っているわけでもないのだが、自分の思い描いたような仕事の仕方をできないとその日が不完全燃焼に終わる.

家に帰って疲れた顔をしていたら、ジルお父さんが疲れてるのかい、と聞くので
ええ、思ったように動けず仕事が捗らなくて、と言うと
発酵のガスがすごいから当然だよ、それにカーヴ用のライトの調子が悪くてワイン表面の高さが
見えづらいのだろう、週末に新しいのを買っておくからと声をかけてくれて、
その一言に本当に救われた.

この人は今は醸造所での作業は一切しないけれど、その辛さや厳しさは今までに充分経験して知っているんだ.
醸造所内で実際に作業することは、思い描き指示を出すことよりもずっと難しいし、時間がかかるのだ.
そんな当たり前のことを、この先ずっとずっとこの仕事を続けて年齢を重ねたあとでも憶えていたいなあと思った.

きっと自分より若い立場の人に、タンク掃除をしてもらったり、澱引きをしてもらったり、樽の管理をしてもらったりするようになるかもしれない.
その時自分が歩く仕事場が整然としていたら、必ずそこに身体を動かし汗を流して働いてくれた誰かがいたということなのだ.
その人たちの気持ちを察して環境を整えること、その結果ドメーヌ全体にうまく動いてもらうこと.
それを意識できるかできないかで、その醸造所で作られるワインのかたちは違ってくるように思える.

次の日、ジルお父さんはその言葉通り、カーヴ用の新しいライトを2つ、買ってくれた.

by saitomy | 2010-10-08 03:01 | ワイン・ブドウ フランス編
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