ブドウ畑の空に乾杯

Saccharomyces cerevisiae 酵母を加える

前にも使った写真だけど、
これがワインを造るために加えている酵母(イースト)、Saccharomyces cerevisiae.
いろんな人がいろんな読み方をしているのでどれが正しいのかは私も知りません.
私たちのワイナリーでは サカらマイスィス・スィらヴィスィアィ ってな感じで発音しています.
(↓ちょっと画像が粗いけど、写真をクリックするともう少しきれいに見えます.)
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もっと写真載せちゃおう. これを見て美しいと思える人は醸造家か微生物学者になったほうがいいかも.
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ブドウにはもともとイーストがついているので潰したジュースをそのまま放っておいても発酵が始まることが多いけれど、
実はSaccharomyces cerevisiae をブドウ畑からみつけるのは結構難しいです.

たとえば、これはまだブドウが実っていない4月頃だけど、
ブドウの樹にどんな微生物がいるか実験してみたもの.
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たとえば上の写真は葉っぱの裏側を、滅菌された綿棒でこすって、
滅菌された水5mLに入れてフィルターにかけてそのフィルターごと培養したものです.
左側の茶色いプレートに育っているのが主にイースト.
右側の緑のプレートに育っているのがほとんどカビ.
このあとイーストらしきものをサンプルとって単独で培養させ、
いろんなテストしたり顕微鏡で見たりしたけれど、
Hanseniaspora(ハンセニアスポラ)が多かったです.
他にも花の部分、茎、葉の表面、幹、そして畑のワイヤーや土も調べたのだけれど、
Saccharomyces cerevisiae はこの実験の時は見つからなかった.

ちなみに Hanseniaspora はこんなレモン型をしています. これはHanseniaspora uvarum.
(↓これも写真をクリックすると大きな画像になります)
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私自身は自然発酵はおもしろいと思うし、素晴らしいワインを生むこともあるので少量ならやってみたいけれど
微生物同士がいわば競争しあって、結局どのイースト、どのバクテリアが一番活発になるか分からないので
(Saccharomyces cerevisiaeは結構強いので主流になることが多いとはいえ)
大きなワイナリーで毎年安定した品質を目指す場合はリスクが高いんじゃないかと思います.
それが今のところの私の考え.
少量自然発酵で実験的に造ってみて、最後にブレンドしてもいいかもしれないけど.

イーストはワイナリーで培養することもできるけれど、モニターするのに手間も時間もかかるし
厳しく品質管理できる環境がないと、これまた他の微生物に汚染される可能性もあるので大変.
ドライイーストを使うのが一般的で手軽な方法です.

ドライイーストにもいろんな製品がありますが、このワイナリーでは
白の新酒にはCY3079、一般的白ワインにはM3、赤ワインにはD245 か BRL97 等を使っています.

よいイーストの条件は、発酵初期の速くスムーズな進行、泡立ちが少ないこと、
香り高いワインにしてくれること、H2Sやエチルアセテートの生産量が低いこと、
少ない栄養素でも活動してくれること、SO2、アルコールへの耐性が強いこと、
発酵のスピード調整が簡単なことなどです.

イーストを作っている会社は大抵こんな表を用意しているので参考にするといいかも.
http://www.lallemandwine.us/products/yeast_chart.php

ドライイーストを使う場合は、製品の説明書きをよく読んでそれに従ってください.
理論的には、ジュース1mL中に100万個~300万個のイースト細胞があることが理想的といわれています.
だいたい3.785 L のジュースに対してドライイースト1gくらいが目安です.

一般的な方法としては、
まずバケツを洗浄殺菌し、そして水で洗い流しておきます.
500gのイーストに対して5L以上の ぬるま湯(38℃)を用意し、
ぬるま湯に少しずつイーストを振り入れます. (絶対にイーストにぬるま湯を加えないで下さい)
よく洗った手を使って優しく混ぜまず.
泡立てるように強く混ぜてしまうと、イーストの細胞壁を傷つけてしまうのでそっと混ぜてください.
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冷蔵庫などに20分間置いて徐々に温度をさげてから、発酵前のブドウジュースを
ほんの少し加えてイーストを慣れされます.
イースト液とジュースの温度差が10℃以内になるのを待ちます.
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準備が整って、発酵させるジュースにイースト液を加える時は、
容器またはタンクの一箇所にゆっくりと流し込む感じで加えてください.
ジュースを混ぜる必要はありません.
急激な温度差や高い糖分にイーストが驚いて弱ってしまうことがあるので、
まず一箇所にとどめておくことで、イースト層の底辺~中間部分をショックから守ることができます.
そのうち発酵が始まれば、発生する二酸化炭素によって自然に混ざっていきます.

説明の分かりにくい部分や質問がありましたら、いつでもメールを下さい.
メールアドレスはこのブログのページ下部分にある「メモ」欄をご覧下さい.


今日は午前中はゆっくり朝食と洗濯と読書. 午後出勤でイーストを用意して加えてきた.
イーストの温度が下がるまでギター弾いてたので音楽培養です.
暑いし週末だったので、他にもやることはあったが忘れた振りをして帰ってきた.

夜はDVD2本. 久しぶりに小津安二郎を.

日本に帰りたいよう.

という気分になった.

by saitomy | 2008-08-30 03:00 | ワイン・ブドウ アメリカ編
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