ブドウ畑の空に乾杯

天使の分け前

その日の夜、こんな夢を見た.
私はお気に入りのワインを樽から盗んだのだ.

手を組んで横たわる先生の前で盗んできたワインをグラスに開けた.
人差し指と中指をそろえてグラスに浸し、遺体の唇をそっと湿らせた.まだ温かいような柔らかさがあった.
いつもワインを飲むとそうなったように、先生の顔が赤らんでくるのではないかと思うほどだった.
これが本当の天使の分け前だろうと、夢の中の私はうそぶいた.
先生の枕元には先生と顔のそっくりなお兄さんが静かに座っていた.
すみません、生きている間に飲ませて差し上げられなくてすみません.
言いながら泣きじゃくり、ふと触った先生の額の冷たさにぎくりとしたところで目が覚めた.

by saitomy | 2012-11-03 03:00 | ワイン・ブドウ 日本編
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